前澤工業製双口消火栓CX-2Eのオーバーホール
前澤工業製 地上式双口消火栓 CX-2E のオーバーホール事例です。開閉不能となり修繕をご依頼いただきました。

ご依頼をいただく消火栓の多くは老朽化が進んでおり、経年劣化による故障が主な原因となります。経年劣化をした設備に対して部分的な修理は一時しのぎにしかなりません。ライフサイクルコスト(LCC)の低減には、経年劣化した部品の処置や一斉交換を行うことこそが最適解であるとの信念から、弊社では故障箇所のみの部分修理を行わず、オーバーホールをご提案しております。

再塗装のために本体の塗装を剥離します。旧塗膜が厚く強固だったために、全体をバーナーで炙る「焼き落とし」で塗装を剥離するところです。また、単口消火栓のオーバーホールでは行わない放水口の取り外しも行っています。

放水口の拡大写真です。根本のねじが潰れて破損しています。放水口を取り外すとこのような破損が高確率で発生します。そのため、通常のオーバーホールでは基本的に取り外さないこととして、特に必要がある場合のみ破損交換となるリスクをお伝えしてから取り外すこととしています。

潰れたねじの拡大写真です。取り外す際に腐食した相手側ねじに削られたことで、ねじ山が荒れています。軽度の損傷で済んでいるため、既存のねじ山をさらって切り直す簡単な補修を行います。

ねじを切り直しました。荒れは残りましたが、取り付けに支障をきたさない程度までは修復できました。軽度なので切り直しで済みましたが、状態によっては肉盛りを行ってねじ山を再切削したり、同等品を作製することになります。

なぜこのような破損リスクを負ってまで取り外すのかの理由は「すり合わせ工程」の確度を高めるためです。双口消火栓には、放水方向を切り替えるための補助弁となる放水口弁があります。この機種は、写真上の放水口後端と、写真下の仕切り板が組み合わさって密着することで止水を行う構造になっています。金属同士が接触しているだけで密封を行っているのですから、接触部分に僅かな隙間があるだけで漏水を起こします。この接触部分を平面に削り直して、密着するようにする工程がすり合わせ工程となります。この工程を確実に行うために取り外す必要があるのです。

すり合わせが完了しました。精密石定盤という2~3μm精度の平面上でラッピングを行います。仕切り板に放水口を乗せて水を注いでも漏水を起こさない程度に仕上がっています。

部品を分解しました。放水口弁周辺の部品が多数あることから、消火栓としては部品点数が多くなります。

清掃とケレンが完了しました。あらゆる修理に共通することですが、清掃をしっかり行わないと、よい修理は行えません。可動部分を分解清掃せずに上からグリースを注油して修理を済ませているケースも多く見られますが、原因は接触面の錆や混入物による隙間の減少ですので、清掃を行わない注油には殆ど効果が期待できません。パッキンやガスケットの接触面を平滑にすることは水密に大きく関わりますし、錆を落とさずに塗装を行っても、すぐに塗装が浮いてくるか内部で腐食が進行してしまいます。

単口消火栓と同様に塗装を行います。

双口消火栓では、両方の放水口弁が止水できているかも検査します。写真は右側の放水口弁を閉じた状態で通水して、漏水がないかを確認しているところです。すり合わせをしっかり行っているため、一滴の漏水もありません。

オーバーホールが完了しました。傍目には分解して組み立てただけではありますが、色々な技術とノウハウが詰まっています。

